抜歯をしたのちに顎の骨はどう変化をするかを解説しましょう。
1:抜歯前の解剖学的形態
下顎の顎の骨の絵です。
赤で囲ってある部分は歯槽突起と言いまして、この部分に歯が植わっています。
断面図で見てみましょう。
歯が植わっている上半分(Aの部分)が歯槽突起で、この部分は歯がなくなったりすると形が変化します。
顎の骨の下半分(Bの部分)は歯がなくなっても変化をしません。
ですから、歯を失って骨が痩せるというのは基本的に歯槽突起の部分がなくなってゆくことを指します。
2:抜歯をしました
歯を抜きますと、まず骨の陥没をガードするために周りの歯肉から皮(上皮)が伸びてきて、傷の面(創面と言います)を覆い尽くします。これにかかる期間は約1週間。抜いた直後は傷が露出しているので抗生物質投与で感染を予防する必要があるわけです。
凹んだ傷の中で骨が修復されてゆきますが、この時一番深いところの骨はだんだん増え、骨の一番高いところは減ってゆきます。そして穴がだんだんと浅くなってゆくわけです。
ここで大事なことは、骨は一番高いところまでは戻ってこない、という点です。
抜歯をした傷が完全に治って安定した状態です。
Aの歯槽突起の高さが半分くらいになっているところにご注目ください。
実際にどのくらい残るかは、ケースバイケースで変わってきますが、とにかく歯槽突起の高さは減ってしまいます。
そしてもう一つ、歯槽突起の高さが左右で違うところにご注目。実は歯槽突起の痩せ方は内側(舌側)と外側(頬側)で不均衡なのです。
一般的にいって、上顎では外側(頬側)の骨がより多く痩せ、下顎では内側(舌側)の骨がより多く痩せてゆきます。
このことがまた、義歯でうまく噛み合わせることを難しくしてゆく要因になります